JAFストーリー

027 バイクで披露宴

 

 ふたりが結婚式を挙げたのは、ガーデンウェディングのできる式場だった。

 

「結婚式場の見学会に行ったときに、自分はバイクで登場するっち、もう決めちょったんですよ。できんかったら決めません的な話を最初っから言いよって、うちは大丈夫ですよ、できますよって」

 

 新郎が大型のバイクにまたがって登場、扉から出てきた美しい花嫁を迎えるという演出である。

 

 結婚式の前夜。ふたりの式を担当するプランナーから電話がかかってきた。厨房裏の駐車場に待機させているバイクからガソリンが漏れているとのことだった。

 

「そこのシェフが気づいて、くさい、と。キッチンじゃ火も使いよるし、危ないっち……自分がバイクで登場するっちゅうのは、そこのスタッフみんな知っちょったんで、ああ山下さんのバイクが漏れよるがっち言ったらしくて、ほんで私に電話かかってきたんです」

 

 大慌てで駆けつけ、とにかくバイクを式場の外に出した。目の前の公園脇から、購入したバイク店に電話するが、さすがに時間外で対応は無理だと言われた。

 

「もう放心ですよ。落ちこんで、だめやっち、もう終わったっち」

 

 電話をかけてきて泣きそうになっている達也さんに「そんなわけないやろ」と聡美さんはJAFに電話することを提案する。

 

「いやぁ無理やっち、JAFも来てくれんよ、こんなところに」

 

 と、完全に気弱になっている達也さんだった。

 

 20分ほどで田辺和幸隊員が到着。漏れている箇所を特定した。

 

「応急処置をしている会話のなかで、明日結婚式でバイクを使うという話が出てきたんで、より確実に、式の最中に漏れることのないようにしようと思ってたんです」

 

 漏れを止めたあと、ほとんど燃料がなくなっていたので、近くのガソリンスタンドまで伴走し、最終チェックをした。

 

「そこで家にも電話かけたんやな。JAFのひとが助けてくれたっちゅうて。隊員さんにも代わって」

 

 田辺隊員はよく覚えていた。

 

「はい、話しました。奥様からはほんとありがとうございましたって、ご主人さんよりも喜んでいただけて、ほんと自分のことのように」

 

 ところが結婚式の当日。なんと、朝から雨。聡美さんが笑う。

 

「入場の前に、べつべつにスタンバイするじゃないですか。そのときに、雨はちょっとやけん乗りないよって。わかったとか言って」

 

 せっかくのリーゼントがしょんぼりしていたが、とにかく、予定どおり新郎はバイクで登場した。

 

 田辺隊員は、人生の門出を手伝えたのが、とてもうれしかった。その日、夜勤明けの空を見上げて、ぱらつく雨を気にした。