米川明美さんのお宅を訪問すると、まず、こう恐縮された。
「JAFストーリーのページを読んでると、とんでもないところでクルマが動かなくなったゆうのばっかり出てますから、こんな、家の前でやったのなんか、取材には来られないと思ってました」
明美さんは、今年の正月に、自宅にJAFを呼んだのである。バッテリーあがりだ。
「昔から元日は、氏神さんやお寺に新年の挨拶に行って、それから、おもだった親戚に行きますわね。子どもたちもみんな来るし、大社に参ったり、予定も入っとって、ヒマじゃないゆう感じですわ」
大社というのは近所にある出雲大社だ。
とにかく、予定がつまって忙しい正月がスタートする元旦の朝、明美さんがエンジンをかけようとしたところ、かからなかった。
「振動がすごくて、バタバタゆうか、すごい音がしました。ダァッと揺れてるような音がして」
そのときは、まだ家にいた息子さんのクルマで送ってもらったが、そのあとの親戚まわりなど、クルマが動かないと不便きわまりない。
ということでJAFに電話した。安川宣雄隊員がやってきた。
「恐らくですね、セルモーターのギアがうまく噛んでない状態だったと思いますね。バッテリーが弱ってると、ガチガチとかガリガリとか音がするんです。救援依頼されるかたも、よくそう表現されます」
明美さんの話を聞いたあと、テスターで確認すると、やはりバッテリーの電気容量はかなり不足していた。
「バッテリーがねぇ、年数がきとる言われたかなぁ」
と、明美さんは振り返る。正月休みでディーラーも休み。しかも、なにかと忙しい正月である。
「明日もあさっても、クルマを使いたいなぁと思ってたから、お父さんと相談して、バッテリーの交換はできますかと聞いたんです」
明美さんが電話したとき、オペレーターは車種を聞いていた。それで、安川隊員は適合するバッテリーを積んできていたので、すぐに交換することができた。
「車種がわかって、対応ができるものであれば、交換にいたるかどうかはべつにしても、事前準備はしていきます」
しかも、バッテリー交換後、安川隊員は、時計合わせなどの設定をやり直してくれたのである。
「ささいなことかもしれませんけど、ありがたかったですよ、ほんとに」
だが、隊員にとっては、それは基本的なことだそうだ。
車種によっては、コンピューターの初期学習が必要なことがある。バックアップを取って、設定が消えないようにして作業することもある。
明美さんは、さりげないやさしさに心動かされた。
「とにかくね、気持ちのいいかただったですね。寒かったので気をつかってくれたり。JAFさんの、隊員さんに対する指導みたいなのが行き届いてるのかなぁ、とかね。そんなことを感じました」
それを伝えると、安川隊員、もちろん恐縮しまくりだった。