JAFストーリー

019 クルマ愛

 

 児島晴夫さんと裕美子さんは、結婚5年。ふたりで仲良くドライブに行くことが多いそうだ。

 

 晴夫さんが9年前から乗っている愛車は、マニュアル四輪駆動のステーションワゴン。ホイールにもこだわりがありそうで、なかなかクルマ好きな感じ。

 

 4月22日、ふたりは桜を見に出かけた。日本三大桜に数えられる三春滝桜だ。土曜日ということもあり周辺は大渋滞。

 

「クルマから遠目に見て……郡山の駅の近くで食事をして帰ろうかって」

 

 午後2時ごろ、駅前から北に向かい、自動車ディーラー前の交差点を右折して橋を渡ろうとしたとき、突然、大きな音がした。

 

「曲がりきって、ちょうどセカンドにつなぐときなんです。クラッチを切った瞬間、ガガガって、全体が揺れるような感じで。クラッチペダルが戻らなくなってました」

 

「曲がったときに、主人がやばいって言ったんですよ。やばい、と。もう死ぬのかなって、私……」

 

「橋をちょっと過ぎたところから下り坂になるんです。下がりきったところくらいで、シャッターが閉まってる商店みたいなのがあって、歩道のところに寄せられる感じで……そこで止まってしまうのはやむを得ないけど、せめて、邪魔になんないように止めようっていうことで……」

 

 ハザードをつけ、停車した。

 

 クラッチペダルを引っぱってみたが戻らず、どうしようもないと思い、晴夫さんは行きつけの整備工場に電話した。車を運んできてくれと言われた。

 それで、裕美子さんがJAFに電話。少し時間がかかりそうだった。週末の忙しいときに、と、裕美子さんは恐縮した。

 

 待っている間に、反対車線をJAFのレッカー車が通過した。隊員はこちらを見ていたが、そのまま行ってしまった。

 

 明石忠隊員は、滝桜方面で作業を終えたあと基地に戻るところだった。橋の手前で停車しているクルマを見た。その後、指令から連絡があった。

 

「オペレーターから指令がきた時点で、あ、さっきのクルマだったんだという感じでした」

 

 明石隊員は、止まっていたクルマの車高が低いことが気になった。

 

「レッカー車での作業ですと、けん引途中で車体に当たったりしそうな感じだったので、積載できるクルマで安全に運んだほうがいいですね、という話を児島さまに安心コールしました。車積載車に乗り換えるために、いったん基地に戻らなくちゃならなかったんですね。そのぶん、待ち時間のほうが延びてしまって、申しわけなかったんですけど」

 

 そういうことにも気をつかってくれるのか、と、晴夫さんは感激した。明石隊員が車積載車で到着して、すぐに積みこみ作業開始。

 

5分もかかんなかった。それくらいで作業してくれて……

 

 晴夫さんたちは気づいていないが、明石隊員は、クルマを積みこむときにも、アタッチメントを使って角度を調整したそうだ。隊員たちは、ドライバーのクルマへの愛情を、もっとも気にかけ、尊重する。