JAFストーリー

005 路上にいたネコ

 

 ある年の8月5日。

 勝俣さんは、気仙沼の実家に家族で帰省するところだった。

 助手席に奥さん、うしろの席に娘さんと息子さんが乗っていた。

 

 家を出て30分ほど走り、バイパスに出る手前。まっすぐな広い道路の走行車線の真ん中に黒い小さなものが見えた。

 それをまたいだ瞬間、勝俣さんは「ん?」と思った。

 

「縞模様だったんでしょうけど、黒いかたまりに見えた。ゴミかなんかと思って、行きすぎてからルームミラーで見たら、あ、ネコだって……Uターンしたんです」

 

 実は、半年ほど前に、飼っていたネコを交通事故で亡くしていた。

 

「そんなわけで、ネコを探してたんですね。動物愛護センターに行ったりペットショップを見たりして、探してたんですけど、縁がなくて……」

 

 そうやって、出会いは、運命的に訪れる。

 

 手のひらに乗るほど小さな子ネコは、助手席の奥さんに渡したとたん、するりと身をひるがえしてダッシュボードの下に逃げ、そのまま裏側に隠れてしまった。

 子ネコは脅えて、どんどん奥へと逃げてしまう。

 

「ああ、だめだ、どうしようみたいな感じで。金具の隙間に入りこんじゃって、つかもうとすると、どんどん奥のほうに入っていくんですよ。こりゃだめだなって思った」

 

 JAFに電話した。10分ほどして、加藤晃隊員が到着した。隊員は、助手席シートをうしろにずらし、ダッシュボードのはずせるものははずし、路面に下半身を横たえ、車内に反り返るようにして腕を伸ばした。

 

「ほんとによくとってくれた。あのときの感動は忘れないですよね。隊員さんが胸のあたりに抱くと、ニャアって鳴いてね」

 

 勝俣さんの感動ぶりは大変なものだった。

 

「不思議な縁ですよ。ドラマチックな1日だったんです。こういうことまでJAFがやってくれるって知りませんでしたから。私もダメモトで電話をかけましたし……。当然無料でした。やっぱりJAFに入っててよかったなぁって。加藤隊員にまたお会いして、お礼を言いたいです。ネコも見せたい」

 

 子ネコはトラと名づけられ、いまはもう3キロを超えている。出会った8月5日を誕生日と決め、その日は「JAFの日」と呼んで祝おうと決めている。とびきりおいしいキャットフードを用意するつもりだ。

 

 そのことを加藤隊員に話すと、彼は喜びながらも少し複雑な顔をした。

 

「実は、私はネコ、得意じゃない……苦手なんですよ。オドオドしながら軍手をしたと思います。もちろん、きれいなやつ。でも、そんなこと言えなくて……正直、ビビりながら作業しました。イヌだったらまだいいんですけど、ネコは、ちっちゃくても抵抗があるんです……」

 

 誰にでも、好き嫌いはある。だが、隊員は、そういうことは顔には出さない。

 黙々と作業するのである。